竜王戦 もうひとつの感想戦

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先ごろの竜王戦読売新聞社が第5局よりインターネット中継をされたことについての興味深い文章がふたつ。

ひとつめは近代将棋3月号の読売新聞の将棋担当者の小田尚英さんの「7番勝負を終えて」
*今期はあきらめかけていたところを、挑戦者の羽生五冠に第4局に向かう途中叱咤激励されて目が覚めた。…*
と書かれていた。
その部分を読ませていただいた時、(なるほど。そうだったんだ。)
とそのことに驚く。
この時、羽生さんは1勝2敗。第4局も敗れて1勝3敗に。
自分が追い込まれてカド番になるかもしれないつらい状況でのインターネット中継のことを、考えられたというのがすごいと思う。

ふたつめは将棋世界3月号。
長く読売の将棋担当をされて、7番勝負でも観戦記を何度も書かれた山田史生さんの「心臓が破れそう」
NHK衛星放送やインターネットでもかなりの情報が流れてしまう。
*観戦記者も大変だ…(中略)…いいかげんな情景描写をしたり、独善的な意見を安易に記すわけにはいかなくなっている。*
という観戦記者の本音(と思う)について書かれていた。
*これからの観戦記は従来のものよりガラリとスタイルの違ったものになっていかざるをえないように思う*
という文章は、いち棋士の私にも、いろんなことを考えさせられる内容だった。

「テレビやインターネットで見たから、将棋の雑誌等や、新聞の観戦記はもう見なくていいや〜」なんて人ばかりになってしまっては、本末転倒。
その逆に
「将棋のことはあまり知らなかったけれども、テレビやインターネット中継で見たらなかなか面白そうだな?買ったことはなかったけれども、将棋の新聞や雑誌を買ってみようかな?新聞の観戦記もあまり注意して読んだことはなかったけれども、一度読んでみようかな?大盤解説会というのも行ったことがなかったけれども一度行ってみようかな?」
この後者のような新しいファンがドンドン増えてもらいたいというのが、私の強い希望である。
たぶん羽生さんも、他の棋士やマスコミ関係の方々も同様と思う。

現在計画中のことのひとつに、自分のホームページのトップに、各新聞の観戦記の対局者等の予定を表示できればいいなぁということがある。もちろんごひいきの棋士や、注目の一局の観戦記は、ふだん取っていない新聞でも、ぜひ買って読んでもらうためである。
Copyright (c) 2001 Kenji Kanzaki