島朗さんという人の不思議さと偉大さ

「どこかで売ってるのなら買いたいもの 」
続き

その1
堺市名人戦谷川−羽生戦が予定されていて、もうすぐ始まるという四〜五日前。
午後からか夕方からのBSの名人戦中継の解説者だった島朗さんから電話がかかってきた。

「一日目の午前中に早指しの練習将棋でもどうですか?」
対局場と関係者の宿泊場所は別の場所。
チェスクロック持参で旅行されていて、前日には前夜祭のおこなわれたホテルの、無人の娯楽部屋の全自動麻雀卓の横で何番か教えていただいた。
順当に負け越したが、当時の角換わり腰掛銀で気になっていた変化や、たいしたことないが自分なりに工夫した順なども試せて有意義だった。
ほかにも、もっと勉強になりそうな練習相手はいたはずなのに、きっとその棋士たちは皆忙しかったのだろう。

その2
1994年10月「角換わり腰掛銀研究」という島朗八段(当時)の渾身の力作が発売された。
多くの棋士の試行錯誤の実戦例も紹介されている。
私の対局棋譜は第二部 現代角換わり腰掛銀の登場の「その3・後手からの桂頭攻め」に一局だけか、もしかしたら他に一局あるかどうかだったはず。
一局だけ収録の棋士に著者から献本が届いた。
これにはびっくりした。
この分厚い研究書には何十人もの棋士が登場するのだが、私のところに来るということは、そのすべての棋士に郵送されているはずだからである。
この著書以降の角換わり腰掛銀の定跡の進歩にとてつもなく貢献した一冊である。

その3
ほかにも、「純粋なるもの」の編集協力をされた島さんの友人のかたや、百田元世界チャンピオンも交えて、モノポリーをする機会に恵まれたことなどもある。

モノポリーというゲームは、
「自分より相手のためになることを少しずつ積み重ねていって、相手は6のプラス。自分は4のプラス。自分のほうはほかの人にもプラスになることを繰り返すのでトータルで見れば自分の得るものがとても大きい」
そういう考え方に基づいてゲームを進めることが多い。
そういうゲームでさらにちょっとお洒落なところもあるので、島さんはタイトル戦の夜にもプレーを楽しまれたりした。

その相手のためになることを積み重ねるという考え方をモノポリーのゲーム外でも、とても長く実行されたというのが凄いと思う。

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「気が散らないうちに。」の島研座談会のお話には「打算」という言葉も登場する。
「気が散らないうちに。」はそんな【その1〜3】の私の忘れかけた記憶を一度にを思い出させてくれる座談会レポートだった。

文章を記されたかたはどんなかたなのかはわからない。
でもあのブログの文章は、そんな島さんの「打算とご自分で言うという謙遜」を見事に伝えられていた。

モノポリーのゲーム内でも外でもそうなのだが、なかなか自分の目の前の人のほんとうに望んでいることを的確に読み取り、紳士的に行動するのは難しい。

私などは、目の前の人が実は望んでいないことを勧めてしまったり、些細なことにこだわって失敗することも少なくない。
すぐに自分は6でなきゃいやだ、どうして4なんだと駄々をこねてしまう。

最近思い出した上記に書いたようなことも考えながら、少しずつでも、ましになっていきたいものだと思う。

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関西将棋会館道場アドバイザー棋士
  11月22日木曜
12:30〜16:00 七段 神崎健二
http://www.shogi.or.jp/kansai/club/Dojo_conseill.html

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