熱さと感心

臨時総会。

千駄ヶ谷へ向かう途中、駅のホームで有吉道夫先生とお会いする。
なぜか会議で東京に来るたびに途中でお会いする。半年前もそうだった。
まず、倉敷での倉敷藤花戦での里見―岩根戦の二局のお話などを聞かせてもらう。

そして中心の話題はもっぱら昨日の竜王戦第3局。
「あの後どう進んだの?」
封じ手のところで、堂々と▲6五歩と取ったらどうだったのかねぇ?」
正確に答えられた自信はまったくないが、進行などを話す。
現在も増田六段と練習将棋を指されているという有吉九段。
将棋に対しての熱さといったものは、現役時代と全く変わらない。
「あの将棋だったらボクならば先手を持って受けて指して自信があるねぇ」
次局の加古川鶴林寺での第4局では有吉九段は正立会人をつとめられる。

その後、乗り換えの時に桐山清澄先生ともお会いする。
話題はやはり昨日の竜王戦
「▲7八銀と打ったあとはいったいどう進んだの?」

あれ?また聞かれた。
「△7五金と引いてああやってこうやって‥‥(以下略)」

「ほほう。金。金引き。ほほう。」(しばらく沈黙、その後感心に変わる)
「あの局面での金引きはなかなかの手ですね。▲3五桂というのはどうなんやろか?普通は▲2四桂やけれども。
「△2三歩を打って後手も堅くなったので、そうなったらもうかなり大変な将棋ですね。でもあそこで金引きはちょと読みにくい手ですね。銀受けた手がどうやったかな?」
「それと、6六取り込んで7七叩くという筋はちょっと気がつきにくいうまい攻め筋ですね。」

ドンドンと攻めてから途中でじっと手を渡す指し方も、歩を駆使したひねった攻め手筋も、桐山九段もとても好きな指し方なので、昨日の対局の内容について話されている姿はとても楽しそうに見えた。

封じ手で、歩を受けずに堂々とするとどうでしたか?」
有吉先生は桐山先生にも同じことを聞かれている。
「平凡にすぐに△6五桂と取って跳ぶとどうですか?」(以下略)

電車の中で、盤がなかったのがとても残念。
受ける時の手厚さの有吉九段と、軽い形から多彩な攻めを繰り出す桐山九段。
盤駒があれば、きっと昨日の一局の検討を始められていたのに違いない。
今までにもおふたりで何度も戦われたように‥。
Copyright (C) 2010 Kenji Kanzaki

【 夜、竜王戦中継サイトで昨日の対局の感想戦追加コメントを読む。桐山先生の見解の正確さと、7七叩く変化以降の竜王の深い読み筋を確認。 】