故高柳敏夫名誉九段の思い出

高柳敏夫先生に王座戦の観戦記を書いていただいたことは二度ほどあったと思う。

今でも印象に残っていることがある。確か森九段との本戦の一局で私の負けてしまった将棋が日本経済新聞に掲載された。

後日の観戦記の文中で、高柳先生は一門の勉強会で奨励会員の課題に、その一局の急所の局面を研究課題として選ばれて、その中から的確な指摘の手順を観戦記文中にも紹介されていたのだ。その高柳門下の奨励会員の分析内容は的確で、対局者としても参考になる変化が示されていた。
また、後日読み筋の確認について電話をいただいたこともあった。

それよりも数年前。記録係をしていて、夕食休憩後に観戦記担当の高柳先生から、独特の少しかすれた声で「君、これを食べたまえ」といった感じでお菓子を出していただいたことなども二、三度あり、大先生ではあるものの気さくで身近な面もあって意外であったと同時に嬉しかったこともあった。

関西に所属している棋士なのだが、高柳先生に観戦記を書いていただく機会があったことは、とても幸運なことで懐かしい思い出となっている。

高柳先生のご冥福をお祈りいたします。
Copyright (C) 2006 Kenji Kanzaki<A Href=http://wakayama.cool.ne.jp/k2rokudan/ Target=_blank>HPはこちら</A>