指導対局 三面指しのひとこま

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黙々と黙って指して、感想戦をしないのではあまり面白くない。
対局中でもいい手を指された時は、
「なかなかいい手ですね」と言うことも多い。感想戦も好きだ。

右端に二枚落ち二歩突っ切りのご婦人。
中央には二枚落ち銀多伝好きの常連のおじさん。
左端は中飛車の早指しタイプ。

ご婦人はあまり自分の指し手に自信がないみたい。
時々ヒントを出しながらの指導。
常連は、三段ぐらいの力があるので飛車落でもおかしくないのだがいつも二枚落。
そのかわり上手も初手から全力投球。
対局中「どうでっか。この手は?」と話しかけてくるのが口癖で、しかもその時は好手を指してきた自信満々の時が多い(笑)
「うーん。いい手で弱りました」と調子を合わすことにしている。

ご婦人が少し緊張して大錯覚をされたので、2手前に戻してあげる。
中央の常連、「せんせーは、女性になるとやさしいんやなぁ。わしやったら許してもどさせてくれへんのに…」
その通り(笑) 
常連が待ったをしようとして、「ダメです」と言ったこともある。
常連のところは下手が好手連発で順当に上手敗勢。
「この手はどうでっしゃろ。いい手でっかー。」得意のセリフが出る。

ご婦人、好手もいくつか指されるものの無念の一手負け。
感想戦。いろいろな手筋を示すと、なるほどと納得して聞いてくれるのでついつい感想戦も長くなる。
「明日の女性大会は出場されるのですか?」と聞くと「はい出ます」という返事。

さて、中央の常連、楽観して決め手逃し上手必死の入玉
下手も負けじと入玉を狙ってくる。その執念はさすが。
左端の中飛車、ポツリと一言「そんなんやめて、下手はよ投げーゃ」

しかし、意に介せず。
入玉狙い。上手も意地になって手筋を駆使して阻止。
玉は逃がしたものの上手は大駒を詰ますことに成功して、下手無念の投了。
逆転負けにものすごくくやしそうにされている。

ほかの二面は進行しながらだけれども、常連は負けた時の感想戦も長い。
実にくやしそう。
「わしのほうがだいぶ良かったのに、おかしーなぁ」
敗因のいくつかを教えてあげる。

決してマナーは良くはないのだが、いつも指導料を払って必ずブツブツ言いながらも指導に来てくださる、この常連のおじさんと指すのが、実はとても楽しみだ。

次の指導対局の時も、きっと来てくれるに違いない。
Copyright (c) 2001 Kenji Kanzaki