「金二枚でも棒銀は受かるんや」

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震災の半年か1年後ぐらいに関西棋士有志にて発行された 小冊子「かんさい」
収益はすべて義援金として寄付という趣旨で作られた本より抜粋。

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「金二枚でも棒銀は受かるんや」
六段 神崎健二

私が二段の頃だから、十数年前のある日。
「金二枚で、棒銀を受ける方法をやっと見つけた。もう何年も考えてたんやけど、昨日の晩、急に浮かんだんや」
師匠の故灘蓮照(なだ・れんしょう=昭和59年4月26日死去=九段)が嬉しそうな顔をして話してくれた。
 京都、伏見稲荷にあった灘道場にいた常連客や、まだ何人かいた弟弟子たちも、目を白黒させて驚いていた。
 金二枚の八枚落で、棒銀が受かるわけがない。八枚落で、そこまで真剣な駒組みをする必要があるのか?
 灘門下に伝わる秘伝(?)だが、この場を借りて、読者の皆さんに、特別にお教えしよう。
 初手からの指し手
△3二金 ▲7六歩 △7二金 ▲2六歩 △6四歩 ▲2五歩 △6五歩 (第1図)

<img src=http://k2rokudan.cool.ne.jp/img/51.gif>

この6五の位を取るのが急所。
 第1図以下の指し手
▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2三歩 ▲2八飛 △5二玉 ▲3八銀 △6三金 ▲2七銀 (第2図)

<img src=http://k2rokudan.cool.ne.jp/img/52.gif>

棒銀が出動開始。金しか守っていない上手の2筋は受からないようにみえるが…。

第2図以下の指し手
△5四金 ▲2六銀 △4四歩 ▲1五銀 △4三玉 ▲2四歩 △3四玉(第3図)

<img src=http://k2rokudan.cool.ne.jp/img/53.gif>

第3図となって、下手は、こんなはずではなかったのに、俺様の得意の棒銀が立ち往生するとは、と疑心暗鬼。力の差と下手の精神状態を考えると、こうなっては、とても勝てない。
 第3図から▲3六歩と突いて次に▲2三歩成△同金▲3五歩を狙う手には、△4五金でもう一枚の金が働き出して大丈夫。
 ▲2三歩成△同金▲2四歩△2二金▲2六銀が最善だが、やはり△4五金で、上手ペースの戦いとなる。上手の陣形よりも、金二枚と玉で受けようとする根性には驚かされた。
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(後半の灘流矢倉に関する記述は省略… すべて原文のまま。)
Copyright (c) 2002 Kenji Kanzaki