飛車の後ろの歩を突く発想

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将棋の戦法がいろいろと進んだり、工夫されたりしているうちに、偶然昔の指し方に戻っていたり、過去にもほかの棋士によって試されていた手順と似ていたりすることがたまにある。

羽生さんも、昔の升田幸三先生の棋譜を見て、「当時は高く評価されなかったが、後から見たらすごい発想の指し方をしていた。周囲を超えた時代を先取りした素晴らしい感覚」とどこかで言っていた。

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↑は、最近のA級順位戦青野ー谷川戦。
青野九段によって試みられた横歩取りに対して▲3六歩と早く突く指し方。
その優秀性を認めた(…はずと思う)谷川九段も、少しだけ局面は違うものの、王位戦第2局で用いている。
歩を得したのだから、3六に飛車を引いて、じっくりと指そうというのが、現代の対横歩取りの主流。
これは、歩得した上に、右桂の活用を急いで、さらに局面をリードしよう狙い。

A級順位戦や、タイトル戦でも指されたのだから、これから多くの棋士によって試されたり、研究されたりするだろう。

この指し方を見て、連想した局面がある。
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1969年12月、棋聖戦第2局の△7四歩。
▲中原ー△内藤 棋聖戦第2局。飛角桂が乱舞した、空中戦の名局である。(内藤勝)
当時、この一手は画期的な発想だったと、内藤先生の実戦集にも記されていた。

私は、最近の将棋を見てさらに内藤先生の当時の発想の素晴らしさを認識したのだが、内藤先生が最近の2局を見られた時、いったいどのように感じられるのだろうか??
Copyright (c) 2002 Kenji Kanzaki