石井邦生九段著 『わが天才棋士・井山裕太』

石井邦生九段の『わが天才棋士井山裕太』を初めて読む。

産経抄 10月28日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121028/igo12102803160000-n1.htm
には故宮本直毅九段の「隠れた功績」としてミニ碁一番勝負というテレビ番組で6歳の井山少年が挑戦というお話やその後の入門という話が紹介されていた。
そのお話なども読みたかったからだ。
ほかにも、とても有名なインターネットを利用して石井先生が碁を打って指導されて、それから電話で感想戦をしたというお話などもとても関心があった。

井山青年と室田女流の婚約発表のあと、室田さんの師匠の杉本七段から
「思っていたイメージと違って実に腰の低い、礼儀正しい青年だった」というお話を大阪で聞かせてもらった時には、
(婚約者の師匠にあいさつするんやから、まあそうやろなぁ)
などとちょっと失敬なことを想像していた。(室田さんゴメンナサイ)

だが、この一冊を読んでみて、そうではなかったことがわかった。何度も登場するお祖父さんがまだ小さなお孫さんへ、囲碁のいろんな有名なエピソード、歴史のお話をたっぷりとされて「囲碁道」も聞かせてあげたこと。
それに師匠の石井九段がほんとうに小さい時から愛情を持って接して来られたこと。そういったことや周囲の環境などが、腰の低さにも繋がっているように思えた。

婚約者の師匠に対してだけでなくて、周囲の多くの人にも気遣いを見せて接してきているエピソードもいくつも紹介されていた。

同じ関西でも師弟の住む場所は2時間以上離れていて、そのぶんだけ接しかたや勉強方法などもとても工夫されたとのこと。
「少し離れていたからこそかえって良かったこともあった」というようなことも書かれていたのもとても印象に残った。

囲碁の棋力が低すぎるため、残念ながら石に番号を打った図面のページはほとんど飛ばし読みだったのだが、それでも読んでみて良かったと感じる一冊だった。